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生物学的エネルギー機構

何かが動くためには、なんらかのエネルギーが必要です。

 

哺乳類の場合、アデノシン三リン酸(ATP)という分子が分解される過程で放出されるエネルギーを使っています。そのATPを補充するメカニズムとして、生物学的エネルギー機構がホスファゲン機構解糖酸化機構の3つがあります。この記事ではその前提知識をお伝えした後、それぞれのエネルギー機構についてお伝えしたいと思います。

 

まず、エネルギーとは仕事を行うことができる能力と定義されています。生体が仕事を行うのに必要なエネルギーは、主に、炭水化物(糖質)、タンパク質、脂質といった科学的エネルギーを持つ主要栄養素の化学結合の分解により供給されます。

 

生体において、大きな分子が小さい分子に分解される過程を異化作用といい、この過程でエネルギーが放出されます。逆に、小さい分子から大きい分子を合成する過程を同化作用といい、これには異化作用により放出されたエネルギーが利用されます。たとえば、タンパク質からアミノ酸への分解は異化作用で、アミノ酸からタンパク質を合成するのは同化作用です。

 

エネルギーを放出する反応のことを発エルゴン反応といい、一般的に異化作用です。これに対し、吸エルゴン反応はエネルギーを必要とする反応のことをいいます。たとえば、同化作用や、筋収縮をするのもこの反応です。

 

そして、これら異化作用、同化作用、発エルゴン反応や吸エルゴン反応のすべての反応を代謝といいます。栄養を分解する異化作用(発エルゴン反応)で得られたエネルギーは、アデノシン三リン酸(ATP)を介して同化作用(吸エルゴン反応)の促進、つまり筋肉を収縮させたりすることに用いられます。つまり、ATPが発エルゴン反応から吸エルゴン反応へのエネルギー変換を可能にしています。

 

たとえるなら、ATPという銀行員が、外から入ってきたドルを体内で使えるように円に換えるような役割を果たしているんです。ATPが充分に供給されないと、筋肉は成長しないし(成長するためには筋肉を合成(同化作用)する必要、よってエネルギーが必要です)、筋収縮も起こりません。

 

 

atp

アデノシン三リン酸は、アデノシンと3つのリン酸基で構成されています。アデノシンは、窒素を含む塩基であるアデニンと五炭糖であるリボースによって構成されています。

 

 

 

1分子のATPを分解してエネルギーを供給する反応には、水1分子が必要で、加水分解と呼ばれています。ATPの加水分解はアデノシン三リン酸分解酵素(ATPアーゼ)と呼ばれる酵素により促進されています。

 

式1:ATP+H2O←(ATPアーゼ)→ADP+Pi+H+エネルギー

 

20204501ADPアデノシン二リン酸、Piは無機リン酸、Hは水素イオンを示します。ADPがさらに加水分解されると2つ目のリン酸基が離れ、アデノシン一リン酸(AMP)が作られます。生体内では、最初にATPの加水分解、次にADPの加水分解によってエネルギー供給を行います。

 

筋肉は活動していくために、ATP・ADPの加水分解によるエネルギーを常に必要としますが、筋細胞内にはATPは少ししか貯めておくことができないため、ATPを細胞内で生産する必要があります。そのためのメカニズムとして、生物学的エネルギー機構が存在します。

 

生物学的エネルギー機構は、冒頭に示した通り3つあります。ホスファゲンと解糖の最初の段階は無酸素性機構で、筋細胞の筋形質で起こります。解糖の一部と酸化機構は有酸素性機構であり、筋細胞のミトコンドリアで起こっています。

 

無酸素性とは、代謝過程で酸素を必要としないことをいい、有酸素性とは、逆に代謝過程で酸素を必要とすることをいいます。

 

食物に含まれる主要栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質)のうち、炭水化物だけは酸素が直接関与しなくてもエネルギー代謝が可能です。よって、無酸素性代謝では炭水化物が重要です。筋は常にこれら3つのエネルギー機構をすべて動員してATPを生産していますが、その動員される割合は、①運動強度、②運動の継続時間によって決まります。

 

ホスファゲン機構

 

ホスファゲン機構は、主に、短時間かつ高強度の運動(たとえば高重量の筋トレや短い距離のダッシュ)で動員されるとともに、強度に関係なく、すべての運動の開始時において動員されます。このエネルギー機構は、ATPの加水分解とクレアチンリン酸に依存します。クレアチンキナーゼはクレアチンリン酸とADPからATPを合成する際にかかわる酵素です。

 

式2:ADP+CP(クレアチンリン酸)←(クレアチンキナーゼ)→ATP+クレアチン

 

ADPとクレアチンリン酸が供給するリン酸基が結合してATPを補充します。補充されたATPは再び筋活動のエネルギーとして使うことができます。

 

クレアチンキナーゼの反応は高速度でエネルギーを供給するものの、筋に貯蔵されているクレアチンリン酸は少量しかありません。なので、ホスファゲン機構は持続的な長時間の運動ではメインで動員されることはないとされています。

 

ATPを急速に補給できる1つの酵素による反応として、式2のほかにアデニル酸キナーゼ反応(ミオキナーゼ反応)があります。

 

式3:2ADP←(アデニル酸キナーゼ)→ATP+AMP

 

ホスファゲン機構の反応は、ATPやADPなど濃度により影響を受けます。たとえば、式2においては、ADPにクレアチンリン酸のリン酸基が結合することによってATPを生成しますが、運動強度の低下や他のエネルギー機構のおかげで、筋形質のATP濃度が一定または上昇すると、逆にクレアチンはリン酸化してクレアチンリン酸になります。そのため、矢印が双方向になっています。

 

上記のように生成物や反応物、もしくはその両方の濃度により、反応の方向が決定されることを質量作用の法則といいます。

 

解糖

 

解糖とは、炭水化物(筋に貯蔵されているグリコーゲンや血中グルコース)を分解し、ATPを再生産するエネルギー機構のことをいいます。炭水化物は最終的にピルビン酸に分解されます。

 

解糖は、酵素によって触媒される複数の反応が含まれるため、ATPの再合成速度はホスファゲンほど速くないものの、グリコーゲンおよびグルコースの供給がクレアチンリン酸に比べてはるかに多くあるので、より多くの量のATPを合成できます。

 

最終生成物であるピルビン酸は①乳酸への変換、②ミトコンドリアへの輸送のどちらか1つに進みます。

 

①の場合、ATPの再合成速度は速いですが、あまり持続しません。この過程は無酸素的解糖、あるいは速い解糖と呼ばれています。一方、②の場合、ATPの再合成速度は遅いですが、より長い時間再合成を継続することができます。この過程は有酸素的解糖、あるいは遅い解糖と呼ばれています。しかし、解糖そのものは酸素を必要としないため、「無酸素(速い)」「有酸素的(遅い)」という言い方は適切ではないといわれています。

 

ピルビン酸が進む経路は、筋トレのように速いエネルギー変換が必要な場合は主に①に進み、必要とされるエネルギーが少なく、酸素が十分に供給されている場合は②に進みます。

 

①について、乳酸形成の際にできる水素イオンの蓄積によって、細胞内が酸性に傾いて筋収縮-弛緩に阻害が起こったり、酵素の代謝回転(ターンオーバー)率を低下するといわれてきました。このように代謝が原因で細胞内が酸性に傾いてしまうことを代謝性アシドーシスといいます。しかし、近年ではATPの加水分解のような別の機構が水素イオン蓄積の主な原因であり、乳酸そのものは代謝性アシドーシスを促進させるのではなく抑える方向に働くのではないかと示唆されています。

 

乳酸は、生成された筋細胞内で酸化によって処理されるだけでなく、血液中を運ばれて、エネルギー基質としてほかの筋細胞、たとえば、遅筋や心筋でしばしば酸化されることがあります。また、同様に血液中を運ばれて肝臓に運ばれ、炭水化物以外の物質からのグルコース形成(糖新生)にも用いられることがあります。このように、筋肉でグルコースから乳酸を作り(速い解糖)、肝臓で乳酸を用いてグルコースに戻す過程をコーリ回路といいます。

 

次に②について、ミトコンドリアにおいてピルビン酸は、酸化機構で使われます。

 

解糖の抑制は、主に、pH、ATP、クレアチンリン酸、クエン酸、遊離脂肪酸の大幅な減少によります。ほかに、解糖系酵素の濃度や代謝回転率もかかわってきます。

 

酸化機構

 

酸化機構は、安静時および低強度の運動時に主にATPを供給し、基質として炭水化物と脂質が主に使われます。タンパク質も酸化機構で基質となりえますが、長期の飢餓や90分を超える長時間の運動といった場合でない限り、通常は代謝されません。

 

安静時には、ATPは約70%が脂質から、約30%が炭水化物から得られています。運動強度があがっていくにつれて主に使われるエネルギー基質が炭水化物へと移行します。すなわち、脂肪を減らそうと運動するならば、できるだけ強度の低い運動をするというのが近道なのかもしれませんね。1番は無駄な脂質を取りすぎないことだと思いますが。

 

炭水化物は解糖によってピルビン酸に分解され、そのピルビン酸が、体内に十分な酸素があることによって、乳酸に変換されずにミトコンドリアに輸送され、ピルビン酸脱水素酵素によりアセチルCoAに変換され、クレブス回路に入ってさらにATPを再合成します。一方、解糖の反応により2 分子の還元ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)もミトコンドリアに輸送され、電子伝達系に入り、ATP再合成のために利用されます。

 

脂質の場合、脂肪細胞中に貯蔵されているトリグリセリドはホルモン感受性リパーゼと呼ばれる酵素により分解され、遊離脂肪酸として血液中に放出されます。この遊離脂肪酸は血液循環により筋線維へと運ばれます。遊離脂肪酸はミトコンドリアに入り、β酸化と呼ばれる一連の反応によって分解され、アセチルCoAと水素原子が生産されます。そして、アセチルCoAは直接クレブス回路に入りATPを再合成します。水素原子は電子伝達系に運ばれます。

 

タンパク質がエネルギーとして代謝されることになる場合、アミノ酸に分解され、そこから糖新生過程を経てグルコースに変換されたり、ピルビン酸やクレブス回路の中間産物へと変換され、ATP生産にかかわっていきます。

 

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エネルギー機構は、運動強度と運動継続時間により、主に依存される機構が変わります。下の表を参照してください。

 

主に利用されるエネルギー機構と運動の強度・継続時間の関係 ATP生産速度と生産能力ランキング

 

 




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